「綾さん、行こっか」
ちょうど部屋に入って来た仁に声をかけられ、
驚いたあたしはその紙を落としてしまった。
「あ、ごめっ! 落ちてたから拾って……」
読んじゃった。
とは言い出しにくくて黙ってしまう。
その紙を拾った仁は、
別に何も変わらず
「あぁ、これな。昔からの同級生やねん。腐れ縁て感じの」
あ。
家族以外でも貰うんだ。
あたしは一瞬にして嫌な女になってしまう。
「あー違うで? そん中におる奴といい感じみたいやから。本間なんもないで?」
ちょっと焦っていう仁が、
あたしの顔を覗き込んだ。
仁は、あたしの心の中が読めてるのかな。
それとも、あたしが顔に出やすいだけ?
だって今、不安に思ったことを
まるで、わかってるよ。そんな答えをくれるんだもん。
「ありがとっ」
この一言を言うのが精一杯で。
だって、これがあたしの全部の気持ちだもん。
仁となら上手く行くかもしんない。
ううん、絶対上手く行く。
何の根拠もないけど、だけど仁となら……何故かそう思った。