長い長いコールが終わり切れたと思ったら、
再び鳴り響く携帯電話。
「あ゙ー! もう誰やねん」
あたしの額にキスをひとつ落とすと、
怒った仁は携帯に出た。
「はい?」
それはそれは、
とてつもなく低ーい声で。
「……嫌や」
あたしをチラッと見つめると何度も同じセリフを繰り返す。
「あー、はいはい。わかりましたぁー」
鬱陶しそうに、
そう呟くと切った携帯を放り投げてしまった。
「どうかしたの?」
驚いたあたしに、
申し訳なさそうな顔を見せ
「ごめん、バイト戻らなあかんねん」
あぁ!
忘れてた!
仁、バイト途中だったんだよね。
「ごめん! 忘れてた! 早く行こう?」
そう言って立ち上がったあたしを引き止める。
「ゆっくりでえぇよ」
「え。駄目でしょ?」
「えぇねんて。本間やったらあがってる時間やし」
あ、そうだよね。
昨日は約束の時間前には終わるって言ってたし。
じゃあ、何で。
「バレンタインやからって休む奴とかおったりして、帰らしてもらわれへんだけやったし」
なるほど。
そりゃ帰らしてもらえないわけだ。
「じゃあ、尚更駄目じゃん。早く戻ってあげた方がいいよ」
半分本気で、
半分残念。
ってとこだけど、仕方ないよね。
それに、あたしは十分気持ちは伝わったし、ね。