「もう行くから」



そう言った仁が、
あたしの腕を掴み立ち上がる。



「えー! ケチ! 綾乃ちゃん今度ゆっくり話そうな!」



美代さんが膨れながらも、
あたしに手を振ってくれて笑顔でその場を離れた。

ぐいぐいと引っ張る仁に、
何も言えないままついて行くだけ。


チラッと見上げた仁の耳が、
何となく赤くて。


もしかして、さっきの言い合い……恥ずかしかったのかな?


なんて思うと、
笑えてきた。



バンッと大きな音を立てて閉まったドア。


仁の部屋へと入って、
やっと掴んだ腕を離してくれた。



「もー、まじで嫌や。あいつ」

「美代さん?」



少し笑って言うあたしに、
頭を抱えてベッドに座り込んだ仁が頷いた。

何か、今日の仁可愛いかも♪



「だから、付き合ってる事隠してたの?」



仁の隣に座り聞いてみた。



「……そう」



なーんだ。

なーんだ。

そうなんだ。

それだけだったんだ。


ホッとしたのと、
おかしいのとでクスクスと笑いが止まらない。