「もうえぇやろ」



そう言いながら
あたしの手を引いてリビングのドアに手をかけた仁に



「待てーい!
綾乃ちゃんだよね?
さ、座って座って!」

「おい、美代!」



怒る仁を無視して、
あたしの手を引っ張る美代さん。


未だ全く状況の飲み込めないまま美代さんに引っ張られて、ソファへと座わらされた。



「仁の彼女、綺麗だねぇ♪」

「本間やでなぁ。こんなんのどこがいいんやろか」



美代さんと翔さんが、
あたしの顔を見ながらにこやかに会話する。


その横で仁は不貞腐れて座ってるだけ。



「最近な、仁の様子があまりにも変やから、絶対彼女出来たって思っててん。
バイト先に行ったら会えると思ったのに、会われへんし」

「おい、美代! あんまいらんこと言うな!」



急に前のめりになり怒り出した仁に、
美代さんの隣に居た翔さんが



「俺の彼女を苛めんな、ボケ」



と美代さんの肩に手を回した。



「え。美代さんと翔さんって付き合ってるんですか?」

「うん、そうやで?」



にこにこ笑う美代さんを見て。

肩の力が抜けたっていうか、何ていうか。



あたし、お兄さんの彼女にヤキモチ妬いてたわけ?



……馬鹿みたい。

仁も仁だよ!

初めから言ってくれればいいのに!


そう思って隣を見ると、
ニヤッと笑ってる。


あ……これって、あたしが勘違いしてたこと気づいてる?


やだ。

すっごく恥ずかしいんだけど。