「あぁ、そういうことか」



お兄さんは、
あたしと仁の間を見てニヤニヤと笑った。



あ、手……。



繋いだままの手を離そうとした瞬間、
握る掌にギュッと仁が力を入れる。



え?

どうしたの、仁。



「仁、声でかいー。って!
あぁぁぁぁぁ!」



キッチンから聞こえた女の人の大きな声。


驚いたあたしが視線を向けた時には、
その人はあたし達に走り寄って来ていて。

繋いだ手をまじまじと見つめ、
ニヤッと笑いながら顔をあげた。



あっ、この人!

さっきカフェに居た人だ。



「美代の方が声でかいわ」



溜息まじりに呟いた仁を無視して、
美代さんの目がキラキラとあたしを見つめていた。



「ねぇ、仁の彼女だよね?」

「そうや。はい、これでえぇやろ?」



あたしが答える前に、
勝手に答えてしまった仁の声だけで不機嫌なのがわかる。



「仁に聞いてないよっ。
あ、あたし美代、宜しくね!」

「あ、柊綾乃です。宜しくお願いします」



サッパリわけのわからないあたしは、つられて挨拶を返す。



「仁の兄の翔(ショウ)でーす」



ソファに座ったお兄さんからも挨拶され、同じように挨拶をした。