「仁ってバイク乗れたの?」
「うん」
アッサリした答えが返ってきた。
「いつも電車だったよね?」
そう、会う時はいつも電車だったし。
バイク乗ってる姿なんて見た事なかったよ?
「あー……俺、自分の女以外乗せへんから」
うがっ!
なんて甘いセリフ!
今……瞬殺された。
「綾さん? バイク嫌い?」
「ううんっ!」
そんな事ない、あるわけない!
ただ仁の言葉に撃ち抜かれたとは、
絶対言えない。
真っ赤な顔でヘルメットを被り後ろに乗ったら、
クスクス笑ってるのか仁の肩が揺れている。
“自分の女以外乗せへん”
って……かなーり効いた。
サラッと言う仁をまた、
好きになってしまった。
そんな事、言っちゃう人が彼氏?
何度その言葉を思い出しても、
頬が熱くなる。
走り出したバイクの後ろで、
景色なんて見てる余裕もないくらい。
仁の体温。
仁の香り。
もう……それだけで、
いっぱいいっぱいになってしまった。