「んじゃ……行こか」
今までくっ付いていた体は簡単に離れてしまった。
あ……もう少し。
そう思ったのに、
やっぱり言えないあたし。
ほら、すぐ出た悪い癖。
「もう少しこうしていたい」
そう言えば済むだけなのに。
少し進んだ仁が振り返り、
フッと笑みを零すと
「ここでこんなんしたら近所の人に言われるやろ?」
そう言いながら手を差し出し、
来い。の合図。
何で?
何でわかってくれちゃうの?
あたし心の声漏れてた?
「綾さん?」
あたしの目には、また涙が溜まって。
クスクスと笑う仁は、
進んだ道を戻り、
あたしの手を取ると
「綾さん、泣き虫」
頭をポンポンと撫でてくれた。
勿論、片手は繋いで。