次の日、学校でもバイトでも楠木に会わなかった。
そういえば、楠木にと話さない日って初めてじゃない?
それはいつからだったのかなんて全然思い出せないけど。
大分前からだったんだと思う。
私の記憶に残らないくらい前から楠木は、わたしのそばに居たのかもしれない。
それだから、だよね?
この私が仁より、楠木を目で追ってしまうのは。
昨日の今日で、仁への想いが楠木に変わる事なんて有り得ないんだし。
だけど、どうしてかな。
楠木が気になって仕方ないんだ。
携帯を取り出し、ボタンを押してディスプレイに映るのは
“楠木”
耳にあて、機械音の後に漏れた少し戸惑った声。
だから私は、その声に
「もしもし、楠木?」
今日も強気で話しかける。