ミュールを履きながら玄関のドアに鍵をかけて、
エレベーターまで小走り。


下に行けば、会えるってわかってても、少しでも1秒でも早く会いたくて。

この年で、こんな事を思うなんて馬鹿なんだろうけど。


馬鹿でもいいもん。

気にしないっ!


下に着くと、見慣れたバイクの前に仁が居た。

私に気づき、いつもの優しい笑顔をみせる。


それだけで、胸がキューンって締め付けられて苦しくなっちゃう。


あたしも笑顔で返すものの、ピンクに染まった頬が恥ずかしくて少し俯いてしまった。

気持ちは焦るのに、仁のそばに向かう足はゆっくりで。



前に立って、見上げて、



「お待たせっ」



って言ったら、



「全然、待ってへんし」



って頬を触られた。