「何で念入りなん?」
「へ!? あ、ほら! デ、デートだし」
体を後ろに下げてみるものの、
下げた分だけ近付く仁。
首に触れられた手から、
全身が一気に熱くなる。
「俺とのデート楽しみにしてくれたんや?」
「は、ははははいっ!!」
そんなの当たり前だけど、
近い。近いよ。近過ぎるよ、仁!
「ぶはっ! 綾さん、落ち着いてぇや」
呼吸の仕方すら忘れそうになった、
あたしを笑いながら仁が離れた。
両頬に手を当て真っ赤であろう顔と、
ドキドキと大きな音を立てる心臓を落ち着かせようと努力する。
もう!
仁がドキドキさせてるくせにっ。
「仁の意地悪!」
そう言って、
離れてしまった仁の腕に手を絡めた。
「え? ちょ、綾さん?」
今度は仁が焦ったみたいで。
あたしばっかりドキドキさせた仁が悪いんだもんねー。
と、ちょっとした意地悪。
「仁、顔赤くない?」
ニヤニヤしながら聞いてやるんだから。
「……はあー。やっぱ綾さんには敵わへんわ」
素直に負けを認める仁も可愛くて、
あたしはギューっと力を込めた。