立ち竦むあたしに



「……綾乃さん?」



そう呼ばれて、
ハッと視線を向けると目尻を押さえた礼子ちゃんが、こちらを睨んでいた。



隠れることも忘れ。

逃げることも出来ない。



「見てたんですか? 趣味悪いですね」



そう言われ目を逸らした。

確かにその通りだ。

人の告白を、たまたまとは言え覗くなんて。



「ちょっと寄って行きません?」



そうカフェを指差し、
あたしは首を振ったのに。


礼子ちゃんに手首を掴まれ、
カウンターに座らされてしまった。



目の前に出て来たミルクティー。

ふわっと湯気が立って甘い香りで誘う。