「今日楽しなかったやろ?」

「ふへ?」



今日?

何の話?

頭の中は化粧ポーチの場所や、
デコッパチを隠す方法ばっかりを考えてて全然わからない。



「文化祭」

「あー! 文化祭の話?」

「ぶはっ! 化粧で頭の中いっぱいやった?」



……はい。
すみません。

それ以外、頭にありませんでした。


でもさ。

そんな笑わなくても、いいじゃん。



「で、何で?」



何で……か。

“礼子ちゃん”とは、言えないよなぁ。



「……礼子?」

「え? 何で?」



思わず顔に出た……と思う。

無理矢理笑顔を作ったけど、
仁にはバレてるよね?



「やっぱり。今の顔でもわかったけど、礼子と会ってから様子変やったもん」



そっか。

やっぱりバレてたんだ。



「礼子、何かした?」



首を振った。



「じゃあヤキモチ妬いた?
なーんて……って、えぇ!?」



自分で言ったくせに顔を真っ赤にさせて1番驚いてるのは仁、本人。


あたし、顔に出やすいのかな。

頑張って隠したつもりなのに、
バレばっかりだよ。