暫くして出て来た仁は、
楽しそうに笑ってて。
だんだん近付いてくると
聞こえてくる会話に耳を塞ぎたくなってしまう。
「ね、観て正解だったでしょう?」
「おー。まじでアイツ等、最高やったな」
「ねー! でも最後まで観れなかったのが残念だね」
「まぁな。でも礼子も敦達と観てればよかったのに」
「んー、仁が居なきゃツマンナイじゃん」
「何やそれ」
「敦、彼女とラブラブだし」
「あぁ、確かにな」
そこには楽しそうに笑う仁が居て。
その横には、
当たり前かのように笑う礼子ちゃんが居て。
あたし……何やってんだろ。
「綾さん、待たせてごめんな!」
駄目、だ。
顔見れないや。
だけど礼子ちゃんに嫉妬してるなんてバレたくない。
「あ、仁。私行くね」
「おう」
あたしの目の前直前で突然、
礼子ちゃんがアッサリと引いた。
それに驚いて、
あたしが顔をあげるとふんわり笑い軽く会釈をして立ち去る。
何なんだろう、あの子。
全然掴めないよ?
「綾さん?」
仁の声に反応することも出来ないくらいに、
あたしの頭の中は礼子ちゃんでいっぱいになってしまった。