「あ、そっか。綾乃さんには分からないか」



なんて嫌味な一言を笑顔で付けて



「次、体育館でするライブ、仁の友達が出るんですよ」

「あ、そうなんだ」



そう説明され、
仁に視線を戻すと申し訳なさそうに頷く。



「なら、観に……」

「あー、でも綾乃さん。さっき具合悪くなったんですよね」



へ!?

“行こうよ”と続けたかった言葉の上に礼子ちゃんの大きな声が重なった。



「残念だね、せっかく楽しみにしてたのに」

「えぇよ。綾さんの具合がまた悪くなったらあかんし」

「仁、やっさしー」



ちょっと待って。



「綾さん、どっか座ろっか」

「あ、仁観てきなよ」



背中を押す手を避けながら
何故かわかんないけど。


そう言ってしまった。



「でも……」

「あたしなら大丈夫だよ! また調子よくなったら入るし。ね?」



って、何であたし調子悪いことになってんだっけ?



「仁、綾乃さんもこう言ってるんだし、ちょっとだけでも観に行こうよ!」

「や、でも」

「観るって約束もしてたじゃん。ちょっとだけ観て戻ればいーじゃん」



あ、れ?


何か礼子ちゃんの顔が生き生きしてる気が。