「綾さん、大丈夫!?」



トイレから出ると心配そうにした仁がいた。


そりゃ、そうか。

あんな不自然に行ったら心配するよね。



「なんか会場に酔ったみたいだよ」



なんて言おう。

そんなことを考えていたあたしより先に、
言ったのは礼子ちゃん。



「あ、そうなん?」

「えっ。あぁ、うん」



何?

あたし、そんなこと一言も言ってない。


この場を切り抜けるためには有り難かったけど……。



「気付かんくてごめんな。どっかで休もか」

「ううん! 大丈夫だよ!」



眉を下げて謝られ、
礼子ちゃんの誤魔化しを利用してしまったことを後悔した。


そんなの嘘なのに。

仁に心配かけちゃった。



「でも……」

「ね、仁! 綾乃さんも大丈夫だって言ってるんだし、そろそろ次の観に行こうよ」



え、次の?



「いや、でも」

「仁観たいって言ってたじゃん」



何の話なのかが全く読めない。



「……うーん」



言葉を濁しながら、
あたしに目線を落としす。