「あ、ごめん。ちょっとトイレ!」
こんな顔、仁に見られたくない。
そう思ったあたしは、
不自然過ぎる行動を気にする余裕すらなかった。
駆け込んだトイレで、呼吸を整える。
仁があたしを好きでいてくれるなら何の問題もない。
そうでしょう?
それなのに何でこんなに不安なの?
そう思った時、
「大丈夫ですか?」
後ろから礼子ちゃんの声が聞こえた。
「何か顔色悪かったみたいなんで」
心配そうに、あたしに差し出す綺麗なハンカチ。
「あ、うん。大丈夫だよ。ありがとう」
そのハンカチを受け取るも
礼子ちゃんの顔が見れない。
「仁の彼女が、こんな年上の方だなんて知らなかったんでビックリしました」
クスリと笑う礼子ちゃんの言葉に顔をあげた。
……こんな年上。
それが嫌味にしか聞こえないのは、
今のあたしの心が狭いせい?