「綾さん!」
ザワついた体育館を出ると同時にかけられた声に、
ハッと視線をあげた。
先に待っていた仁が大きく、
あたしに手を振る。
「中おったんや?」
「……うん」
その側には、敦君と敦君の彼女。
そして……
「あ、コイツが礼子な」
ほら、やっぱり。
あたしの思った通りだった。
「はじめまして、稲田礼子(イナダ レイコ)です」
ふんわり笑った礼子ちゃんは、
仁の隣に居る。
そこは……あたしの場所なのに。
「綾さん?」
「え? あ、は、はじめまして!」
どうかしたん? いつもの仁の言葉さえ素直に入ってこない。
あたし今、絶対嫌な顔してる気がする。