「ちょっと聞いてんの?」

「え? あ、聞いてなかった……ごめん!」



怒りに満ちた声に、
思わず謝ってしまうという失態。


あたし情けないも通り過ぎた気がする。



「何なのこの人……」



隣に居た女の子が怪訝な顔であたしを見つめる。



「あんたなんかが広瀬君の彼女なわけないよ」

「だって、広瀬君の本命は礼子だもん」



え。

その言葉に、あたしの目は見開いた。

礼子って……あのバレンタインの時の?



その後のことなんてほとんど耳に入ってこなくて。

あたしの頭の中には、礼子さんが送った手紙がぐるぐると回る。



「ね、その礼子ちゃんは、同じクラス?」

「は? そうだけど」

「彼氏とか……いい感じの人とか居ないの?」



だって、仁言ってたよね。

礼子ちゃんにはいい感じの人がグループ内に居るって。



「だからぁ、それが広瀬君だってば」



嘘、だよね?

だって仁が言ってたんだもん。



「う、そ」

「嘘じゃないってば。オ・バ・サ・ン」