「仁、はっけーん!」
「チッ……見つかったか」
遠くから聞こえる声と、
隣で小さく呟いた仁の舌打ち。
あたし達の前で、ハァハァと息を切らし
「交代の時間なんすけどっ」
両膝に手を当て、
額に汗が滲んでいる敦君の言葉に時計を見た。
「えっ! ごめんね、敦君」
楽し過ぎて交代の時間忘れちゃってたよ。
謝るあたしに、首を振りながら姿勢を正し
「仁、絶対わざとだから綾乃ちゃんのせいじゃないよ」
へ?
どういうこと?
そう聞こうと思った瞬間、
隣から溜息混じりに仁の声が聞こえた。
「お前、気利かせや」
「ほら、やっぱり。でも残念でした」
え、仁わざと交代しなかったの?
「俺、今まで頑張ったもん。次はお前だろ」
「敦が最後までしたらえぇやん……」
「俺も彼女待ってるし無理!
てか早く行けって、もうすぐ始まるぞ。
綾乃ちゃんは俺達と一緒に居ようね」
敦君に彼女が居たのも初耳で驚いたけど。
仁が子供みたいに拗ねてることにも驚いた。
でも、あたしと一緒に居たい。そう思ってくれてたってことだよね。