「それはそれで寂しいかも」
ほんの少し照れ、
ほんの少し拗ねた仁がそこに居て。
あたしは思わずフッと笑ってしまった。
「あ、今笑った?」
「ううん、笑ってないよ」
「笑ったやろー」
「笑ってない、笑ってない」
ちょっとムキになる仁も可愛い、
なんて思ってしまう。
「変な方向に考えてない?」
「う、うんっ」
「嘘吐き」
その言葉が耳に届くのと同時に、
あたしの唇に仁が重なった。
たったそれだけのことで、
さっきまでの小さな不安が消えてしまうあたしは何て簡単な女なんだろう。
仁と居ると、いつも不安で心配ばっかりして。
だけど、それを消してくれるのは仁で。
やっぱり、あたしには仁しか居ない。
そんな当たり前だけど、当たり前じゃないことを思ってしまうんだ。