「ここまで来たら邪魔されへんやろ」
そう言って、
やっと止まった場所は人影のない校舎。
「何となく……ごめんね」
「何となく? 何で綾さんが謝るん」
本当に、何となく謝ってしまったあたしにクスクスと笑う。
「や、何か睨まれてたし」
「あー。いつもあんなんやし気にせんでいいで」
いつも?
やっぱり仁ってモテるんだ。
そりゃ、かっこいいし。
背も高いし。
優しいし。
たまに可愛いし。
モテないはずがないんだけど!
でも何か……。
「綾さん」
「へ?」
考えていたあたしがハッと気付くと、
仁の顔が真正面にあって。
思わず、後退り……
しようと思ったら後ろは、
壁で下がる事が出来ない。
「また一人で変な方向へと考えてたやろ?」
「え、あ、ううん!」
挙動不審なあたしにどんどんと近付く顔。
そのせいで、あたしの動きがどんどんとおかしくなってしまう。
「ふーん。ちょっとも?」
「う、うん! ちょっとも!」
「へぇー。全く?」
「え、ま、全く!」
近い近い近ーい!
鼻先が当たるか当たらないかくらいの距離で止まった仁の前髪があたしの鼻に当たる。