「じゃ、帰るで」
抱きしめていた体が離れ、
今が12月だった事を思い出した。
「え~。カラオケは?」
「明日も仕事やろ?」
「大丈夫だよっ」
「アカン」
ブーブー文句を言うあたしを無視して、
駅へ向かって歩く。
こんな時の仁は、
絶対に譲ってくれなくて。
普段は優しくて何でも言う事を聞いてくれるのに、
変なところ真面目なんだから。
って思いながらも、
そのギャップも好きなんだけど。
仁と歩いていると、
何人もの女の子が見上げて頬を赤くする。
振り返って見る子だって居るくらい。
大声で『見るな!』って言いたいくらいだよ。
仁は……何で、こんなにかっこいいのかな。
電車の中で、ガラス窓に映る仁を見ながら思った。
あたししか見れなくなっちゃえばいいのに、って。
いつもマンション前まで送ってくれる。
毎回部屋に誘うのに、
絶対入らず帰って行く。
何か一線置かれてる感じ。
仁の後姿を見送りながら、
あたしの事好きになってくれるかな?
なんて思ったんだ。