「まじで?」
「……まじで」
「明日着る予定だったのにぃっ!」
この世の終わり、
そんな表情をして叫んだ。
この間、出会った人に何とかデートまで持ち込んだらしい千恵。
かなりのお金持ちらしく、
今回に賭けてる!
と毎回のように言う、そのデートが明日らしく。
前にあたしが買ったワンピが、
絶対にその人の好みだから貸して欲しいと頼まれ。
……完全に忘れてた、あたし。
「私の結婚を邪魔する気なのね?」
え、デートだよね。
何でもう結婚することになってんのよ。
「あぁ、もう駄目だ。プロポーズしてもらえないよー」
……初めてのデートだよね。
それでいきなりプロポーズって。
「あー、もう!
ごめんって!
今日、家に持って行くから。
それなら問題ないっしょ?」
涙目で睨む千恵に溜息まじりに言うと、パッと笑顔に変わり。
「いーの?」
「忘れたのはあたしだしね。
あ、でも仁とのデート終わってからでいい?」
「うんっ!」
我ながら良い考え。
千恵も満足そうに鼻歌なんて歌ってるし。
って、時間!
急がなきゃ。
「じゃあ後で行くからね!」
そう言って走って会社を出た。