「しかし仁、凄いわ。
あんたをココまでにさすんだから」

「え? そかな♪」

「いい年して、赤くなるな」



うぅ……冷たい。

バサッと冷たい表情で切り落とす千恵が恐い。



「本当、合コンに連れてって正解だったわ♪頑張ってくれた仁に感謝しなくちゃね」

「ん? 頑張ってくれた仁?」



仁との出会いは合コンで、
あたしも仁も人数合わせだったはず。

なのに“頑張ってくれた”って、どういう意味なんだろう?


キョトンとした顔で見つめるあたしに、
千恵は急に大声を出し少し焦って。



「あー! えっと、仁が綾乃を好きだって言ってくれて頑張ってくれて良かったね、ってことよ」

「……ふーん?」

「あ! ほら時間だよ」



焦った笑みを見せた千恵が気になったけど、
時間とならば気にしてれない。

終了チャイムが鳴り、
あたしはデスクの上を素早く片付け、
パソコンの電源を落とした。


今日の残業は、
勿論なし。

全てを確認し、
席を立って更衣室へ向かおうとした時。



「あっ! 綾乃待って。
あの服、貰ってないよ?」

「え? ……あ」



忘れてた。



千恵に前から貸してってお願いされてたワンピ。

玄関に置いて来ちゃった……。



「……まさか?」

「……まさかだったり?」



笑顔であたしに掌を見せる千恵の眉間にどんどんと皺が入る。