「って……綾さん? これ……」
仁の指差す方向は、
服の裾をギュッて掴んだまま離さないあたしの手。
だって、仁が……
悪いんだよ?
せっかく我慢したのに、
そんな不意打ちのキス。
もっと一緒に居たくなっちゃうじゃない。
でも、口で言えないんだもん。
「んな可愛いことして
家誘ってたら襲われんで?」
え?
思わず驚いて顔をあげてしまう。
やっぱり悪戯な笑顔は変わらないままで。
でも……仁なら。
それでも、いいんだけどな?
「て……おいっ!
何か否定してや?」
今度は、赤くなった仁。
あは。自分で言ったくせに。
「……だって、まだ離れたくないかなー?
なんて言ってみたり?」
付き合ってこんな大胆な事、
言うの初めてかも。
仁、引くかな。
引いちゃう?
『冗談だよ』
って笑わなきゃ。
でも本当は、一緒に居たいんだけどな?