「しかし、気になることがいくつかあるな。」

幸大が言う。


「それは何ですの?」

可鈴が言う。


「名前だ。」

「名前?

それがどうかしたの?」

圭が言う。


「真名のことか?」

翡翠が言う。


「マナ?

誰かの名前ですか?」


奈々が言う。

「いや、真名っつーのは一部の人間が持つ二つ名だと思えばいい。

昔は名前だけが己の証明だったからな。


妖怪の中には相手の名前を奪い、その人間に化ける奴や、


名前を呼ぶだけで操ることのできる妖怪がいた。」


「その真名がどうかしたんですの?」

「翡翠、お前は真名を持ってるんだろ?」

「当然だ。

私やお前のように討魔を生業にする者は真名を持つ方が多いはずだ。」

翡翠が言う。

「どういうことなの?」

圭が言う。


「つまり、戸籍としては如月翡翠。

だが、この場合は鬼だな。

鬼を倒す時の別の名前がある。



そして、真名には特別な力がある。

俺の真名には魔力があり、翡翠の真名には霊力がある。」

幸大が言う。


「つまり、私たちが真名を名乗れば力が発動する。


討魔を生業にする者は真名に力が宿るため、妖怪たちは真名を呼べない。


最悪の場合、もし真名を呼べばその妖怪に被害を及ぼす。」

翡翠が言う。