知哉のお兄ちゃんが、入口であたしを待っていてくれた。

「幸哉(ゆきや)さん…」

「ああ…里佳ちゃん。待ってたよ」

会う時は愛想のいい、いつものお兄ちゃんの雰囲気はなくて
体中の空気がピリピリしていた。

それ以上、幸哉さんは何も言わずに、あたしを知哉の所へ連れていった。

重い扉を開ける…

「遺体の身元確認は終わってる。…知哉だよ」

あたしの目の前にあった'もの'は───

人間が横たわる姿ではなかった。

おかしな形の'もの'に白い布がかかっている。

「なに…これ」

「顔は見ない方がいい。煙を吸った事によって死んだらしいけど…身体はかなり焼けていたから」

「じゃあ…知哉だなんてわかんないわよね」

「里佳ちゃ…」

「よく似た別の人よ!ねぇそうでしょ?!」

こんなもの、受け入れられるもんですか!

絶対に違う!
これは知哉じゃない!

あたしは全てを否定した。

「これは知哉なんだ!間違いないんだよ!」

「知哉は嘘つきなの!!絶対に遅れてきて謝るんだから!!

ねぇ、そうでしょう!?嘘だって言って!
あたしに謝って!

知哉!知哉!知哉ぁ…!
こんなの知哉じゃないよ!」