明らかに
『振り込め詐欺』じゃんかよ。

俺はホッとした。

「母さん、あのさぁ」

『それでね、母さん銀行に行って振り込もうと思ったんだけど、口座番号を書いた紙をトイレに落としちゃったのよ!!』

…はぃ?

息子の一大事でも、トイレは忘れずに行ったんだな。

『慌てて拾ったんだけど、口座番号が消えて読めなくなっちゃって困ってるの!!』

「消えたって、なにで書いたの?」

『筆ペンよ!だって他になかったんだもの!ねぇ、もう一度口座番号教えてくれない?!』


母親の天然さに救われたが、あまりにもバカバカしくて笑ってしまった。

筆ペンって…


『何よ!?何がおかしいの?!ちょっと、大丈夫なの!?』

「母さん、それ'振り込め詐欺'だよ」

『…嘘っ』

「ホントだって。俺今まで学校に居たんだぜ?」

『絶対に滉一の声だったわよ!!私、母親なのよ!?アナタの声くらいわかるわよ!』

うーん…こりゃ電話じゃ無理だな。

「じゃ今から一度家に帰るから。待ってなよ」

実際に顔を見せないと安心しないだろう…

俺は舞菜に電話して、簡単に事情を説明し、遅れる事を伝えてから

家に帰る事にした。