一応はいるのよ。
イケメンって言うか…可愛い男の子。

だからって恋してるワケじゃないのよ。

ビジュアルが好みってだけ。

だけど阿部くんは保健室には来ないから、仲良くもなれないし。

一度、どーしても!顔が見たくなって双眼鏡で覗いてたら

クセになってしまった。

イケナイ
イケナイと思いつつ

「でもやっぱ可愛いよなぁ」

やめられない。

アイドルを眺めてるのと同じだと思うんだけどな。

阿部くんが三年生になったら、あの教室では見られなくなるし
一年だけだから
まぁ大丈夫よね?

そのうち飽きるよね。

…とか思いながらも3ヶ月覗いていた。

「キーンコーン…」

授業が終わってしまった。

ああ残念。
また来週ね。

双眼鏡をバッグにしまったところで、保健室のドアをノックする音が聞こえた。

「中川先生。今、大丈夫ですか?」

そう言って現れたのは国語教師の鍋島先生。

「はい。どうしました?」

「宮崎が部活に出るって言うんです」

「ああ、あの骨折してた…一応医師の許可が出たって連絡はもらってますよね?」

「そうなんですけど、まだ心配で。中川先生、今日の部活終わりまで付き合ってもらえますか?」