さすがにちょっと可愛くて、ドキドキする。

ああ…ちょっともったいなかった気もするけど───
いやいや!これでいいんだ!

自分に言い聞かせて、オレは立ち上がった。

「えと…じゃコレ早く終わらせて帰ろうか」

「…牧野さん、帰りましょ?明日でも構わないんです、これ」

「えっ、あっ…うん…そうか」

'ワザと残業した'って言ってたんだもんな。仕事に支障がないなら…

それに早く帰らなきゃ、また彼女の誘惑に負けそうな気がしてソワソワしていた。

「じゃオレ、部長に声かけてくるから待ってて」

「牧野さん、あたし先に帰ります」

「あ…駅まで送るけど?」

「ごめんなさい…牧野さんと一緒に居るの、今は少し辛いんです」

「ゴメンな…気がきかなくて」

「いいえ、お疲れさまでした」

彼女はペコリと頭を下げて、さっさと部屋から出て行った。

やっぱり少し泣いていた気がして、オレの胸も苦しい…

家に帰るまでも、小松さんの事が頭から離れなかった。

いい子なんだよな…

だけど、どうにもならない。

どうにもスッキリしないまま、オレは家に着いた。

「あっ、パパおかえりなさーい」

玄関に入ると愛娘が迎えてくれた。