30分かからずに帰れそうだ。

そう思いながら、彼女の見つけた箇所を見ようと身を乗り出した時

急に彼女の髪が頬に触れた。







「あたし…牧野さんの事が好きなんです!」


彼女はオレに抱きついて、そう言った。

一瞬、何がどうなってこうなっているのかわからなかった。

彼女の髪の香り
彼女のつけている香水の香りに、オレはドキドキしていた。

「いや、その…小松さん…」

「牧野さんが結婚してる事も、お子さんがいる事もちゃんと知ってます!でも…

ずっと好きだったんです!」

彼女はオレを抱きしめる腕をギュッと強くさせた。

どうしていいか…正直困っていた。

もちろん彼女を抱きしめてはやれない。
でも抵抗もできなかった。

「あたしと付き合ってもらえませんか?」

「付き合うって…」

「離婚しなくてもいいんです!不倫だってガマンします!それくらい…牧野さんが好き」

──頬を紅くさせて

少し震えながら

彼女はオレを誘惑していた。



クラクラする……



オレが答えないでいると、小松さんは不安そうに聞いてきた。

「無理…ですか?それともあたしの事、嫌いですか?」

「そうじゃなくて…」