あたしは奥さんに深々と頭を下げ、一旦病室を出た。
あ──────……
何度この場面に立ち合っても慣れないわ…
ってか
慣れる事ってあるのかなぁ?
…慣れる方が神経病んでる気がする。
ほんの少し前、
担当していたおじいちゃんが亡くなった。
これで息を引き取る瞬間に立ち合ったのは何人目?
自分の家族じゃなくたって、少しでも知っていた人が亡くなると落ち込むな───…
ため息をつきながら歩いてると、仲のよい看護師に声をかけられた。
「田辺っ、おはよ」
「…なんだ。松田ちゃんか」
「テンション低いな~あのおじいちゃん亡くなったんだって?」
「うん…そうなの」
「毎回毎回そんなに落ち込んでたら、こんな仕事イヤになるわよ?もっと浅く付き合いなさいよね」
「…うん…」
毎回あたしの落ち込みぶりを知っているから、彼女はアドバイスしてくれていた。
「わかってるんだけどなー、でもいいおじいちゃんだったし、奥さんも病院に来るたびに気をつかってくれたし」
仲の良さそうなご夫婦だったから気の毒で…辛さが分かるんだもの。
いくら寿命と言ったって…やっぱりね…
「…気にするなって方が無理か」