そう考えたりする自分に気づき思わず笑ってしまった。

──ふふっ、嫌だわ…

生きているかどうかを考えるなんて、私も年をとったものね。

別れてから十数年は、彼がどんな人と出逢い、愛し合って結婚したのか想像したりしてたわ。

私以外の人と作る家庭。
私以外の人との子供…

多分、結婚はしたと思うのよ。
幸せになれたかしら?

私…私は?
70年も生きてきて、まだわからない。
ただ、人生のパートナーには恵まれなかったような気はしてる。

何故、夫を選んだのかしら。

思い通りの人生を、私は生きてきたのかしら?

私もすっかりおばあちゃんになってしまった。顔も肌も身体も、全てが衰えた。若い頃の面影はないかもしれないわ。

今、彼に生きて再会できたとしたら…お互いすぐに気づくかしらね?

もう恋することはないから、昔話に花が咲くくらいのものね。

「少し風が出てきたわね…」

風で木々の葉が擦れる音。
顔に当たる風の冷たさに気づき、私は病院の中に戻った。

まだ気が重かったけれど、仕方ない。
私は夫の病室へと向かった。

「コンコン」

ノックして中へ入ると、担当の看護師さんが来ていて夫と話しをしていた。