トイレから戻った舞。アルコールを飲んでいないなら、直ぐに気付いただろう。だが、充分に酔っているせいでそれに気付かなかった。
まさか、紅茶にブランデーが入っているとは思わずに、少し変わっていると想いつつも飲みほした。

帰る方向が互いに同じ方面と知り、共に帰る事になった。
よろける舞を間近に見つめた宏宗。紹介を受けた頃から、一段と綺麗になって色香を漂わすその姿に眼を惹かれた。
この日の舞は、恋人とデートと言う事でいつもらしからぬ大胆な襟ぐりカットの装い。
アルコールがもたらす感情なのか?その脳裏に男の本能が疼いた。

舞は不思議に思う。
アルコールが抜けるどころか、酔いが増している。そうでなくてもアルコールは弱いからとラウンジでは紅茶にした筈なのに?
覚束ない思考の中、何故だろうと疑問に思っていた。
実際に身体が思う様にならない上に、さっきより一段と酔いを増している。
一刻も早く帰りたいと気持ちで焦り始める。

「さあ!行こう。」
ふら付く華奢な身体を抱える様に歩き出した。
「ウッ!」
「大丈夫?」
頷くのいが精一杯の舞の状況。
それでも、どうにかエントランスでタクシーに乗り込んだ。

舞のマンションは郊外。それをどうにか伝えてある。
「遠くてすみません。」
「イヤ気にしなくて良いよ。」

ウトウト眠くもなり出した。涼の叔父なら安心と気を許したのが誤りだった。それに気付くのが遅過ぎた。