「涼は一緒では無いんですかな?」
「はい。」
部署が違えば、仕事の混乱も違うのだろうと、その叔父と話していて理解する。何しろ何も知らなそうだ。

「良かったら、食事をお付き合いして頂けませんか?」
「はい。喜んで。」
涼の叔父と言う気安さから、快く承諾した。
宏宗の希望で、中華に決めると2人は早速ホテル内の中華料理店に足を運ぶ。

舞は、思いがけず恋人の叔父とも親しくなれた事に喜んだ。しかも、1人で寂しい夕飯の筈が豪華な晩餐になり嬉しい。
2人で酒を飲み、フカヒレやつばめの巣・北京ダックと言った高級料理に舌包みを打ち、アルコールの量を増して行った。
「私・・・強くないので、これ位にします。」
「そうだね!私も歳だ。これ位にしておこう。」
「はい。」
目の前の相手に、父親の様な温かさを感じて疑う気持ちは全く持ち合わせなかった。

2人は席を変えコーヒーでも飲んで帰ろうと言う事にした。
「もう飲めませんが、アルコール無しでしたらお供します。」
「そうこなくっちゃ!」
ラウンジに移動して、2人は紅茶を注文し語らいの場を延期した。
宏宗も城西卒業生。そしてその息子も2人より2歳年上ながら、城西卒業と言う事から話題は尽きない。
しかも、温厚な気安さが安心感を芽生えさせ、舞は気を許し過ぎていた。

そしてトイレに行った隙に、舞に気を使わせまいとラウンジスタッフに紅茶にブランディーを入れてくれる様に注文した。
それは、寒い冬の季節に身体を温める為にする方法でもあり指して珍しい事では無い。
ただし、それは自分の分だけと言ったつもりでいた。