予想もしていなかった言葉に、俺は思わず親父さんを見た。
するとそこには、目を細めて台所に立つ娘を見つめる父親がいる。



「………私は子供ができない身体でね、だから自分の子供を持つことを諦めていた。でも、娘ができた。…この子が大人になって、いつか結婚するときまで見届けたい。それだけが生き甲斐だったんだ」


料理に夢中になっている真琴にはきっと聞こえていない。
俺はただ、親父さんの言葉をかみしめながら聞き入っていた。



「だから、篠宮さんを連れてきたとき心から安心したんだ。あの通り、少しばかり人付き合いが苦手な子だからね。―――私がいなくなっても、どうか真琴のこと、よろしくお願いします」