台所から聞こえる規則正しい包丁の音。 皿と皿のぶつかる小さな音。 こじんまりとした、でも居心地のいいリビングで交わす酒。 ―――テレビでしか見たことのない家族の風景の中に俺がいる。 「………篠宮さん?」 俺がぼんやりとそんなことを考えていると、親父さんは静かに俺の名前を呼んだ。 「はい?」 「…ありがとう」