「バクは、どうしてあの塔を目指すの?」


隣を歩く彼に聞いた。

しかし、答えてくれなかった。

やっぱり背が高くて……フードを被っているせいもあって、こっちを向いてくれていないと表情がよく解らない。


「バクは、あの塔になにがあるか知ってるの?」


重ねて問い掛けた。

塔には、今までにないくらい近づくことができている。

細い黒い線のようにしか見えたことがなかったのに、だんだん太く、よく見えるようになった。


艶も起伏もないつるつるの塔。

入り口は見当たらないが、そんなの辿りついてからだって探せる。

この調子ならば、本当に辿りつくことができるだろう。

それはバクの存在のおかげだ、となんとなく思えたんだ。


しかし彼は言葉を閉ざしたまま。

無視されているのかと諦めてため息をついたとき、バクが口を開く。


「あそこに、俺の探しものがあるんだ」


「……探しもの? 夢を食べるんじゃなかったの?」


「食べたい夢があそこにあるからね」


へぇ……選り好みするんだね。

人の夢に勝手に入ってきたくせに、贅沢者。

だけど、夢の続きを見せてくれたから……許す。