結局彼と一緒に歩くことになった。

初めて見る景色。

それはやっぱり白と黒のつまんないもので、だけど見たことのない、デジャヴもない景色。


「ねぇ、どうしてあなただけ色がついてるの?」


「色? ……あぁ」


唐突に浴びせ掛けた質問に彼は目を丸くしたが、すぐに理解したようだった。


「俺はよそ者だから、ね」


「どういう意味?」


「君の夢の登場人物ではないってこと」


にこにこと笑いながら答えてくれた。

なにがおかしいの? 変な人。


「それだったら、どこから来たの?」


「ねぇ。貘って……分かる?」


バク?

知らない。

質問したのはあたしなのに質問で返された。

ちゃんと答えてよ。

夢の中でまで不愉快にさせないで。


露骨に不機嫌そうな顔をしてやったって、彼は貼り付けたような微笑を絶やさなかった。


「夢を食べる伝説の動物だよ。俺も君の夢を食べに来た」


「あっそ。じゃあ、あなたはその『バク』ってことでいいの?」


「近いものかな」


つっけんどんに言ってやったって、彼はやっぱり目を細めて薄く笑う。