次に目を醒ましたあたしは、夢の中だった。


「……どういうこと」


聞いたって答えは帰って来ない。

あたしは、あたしの夢の、塔の中にいた。



――あれからバクはどうなったんだろう。

あの小鳥は、お姉さんに食べられちゃったのかな。


「やあ、おはよう……いや、おやすみ、か」


もはや聞きなれた声に振りかえると、そこには相変わらず貼り付けたような笑みを浮かべるバクがいた。


その表情にはちょっとだけ余裕がないような気がする。

だけども、余裕がないのはあたしも同じ。

バクの周りをまるで守るようにひらひらと飛ぶ、虹色の蝶を見たから。


「俺の中、見たみたいだね?」


初めて見るほど、真っ黒い感情の滲みだした表情でバクがそう言った。

怒り、憤り、不満、悲しみ、妬み――そんなマイナスの感情が全部ないまぜになってぐっちゃぐちゃになったような、そんな顔。


「うん……『貘』がどういうのか、なんとなくわかった。その蝶を食べれば、バクが助かって、あたしが次の『貘』になる――でしょ?」