「『貘』っていうのはね、基本的には悪夢を食べていくんだけど……人の心を食べるモンスターよ。心を食われた人が次の『貘』になって、元の『貘』は人間に戻れる……その繰り返しを永遠に続けているの」


「つまり、お姉さんは人間に戻る為に、バ……さっきの男の子の心を食べに来たってこと?」


色々合点がいった気がする。

それじゃあバクは、このお姉さんに食べられたんだ。

そして次の『貘』になってしまったから、あたしの夢を食べに来た――


お姉さんはうっとりしながら答える。


「そう。あの子は『貘』の素質があるから、やっと戻れるわ。ただ心を食べればいいってもんじゃないの。『貘』の素質のある人間の心を食べれば、ようやく戻ることができる」


「『貘』の素質って?」


「まず『貘』の姿が見えたらいいらしいわ。私も食われたとき、『貘』と会ったもの。そして騙されて心の鍵を開けさせられて、食われてしまった」


この人も、誰かに心を食べられたんだ……

同じパターンだ。

やっぱり、バクも自分がされたことと同じように、あたしの心を食べようとした――


「もう一人で色んな人の夢を旅するのはうんざり。やっと戻れる……」