「お姉さん、あたしのこと見えるの?」


「当たり前よ、同じでしょう? 夢に入ることができるのなんて本人か『貘』しかいないのに」


はっ、って馬鹿にしたように鼻で笑われた。

何なのこの人。

やっぱりムカつく。


「あたし、『貘』じゃないよ。そもそも『貘』って何?」


このお姉さんなら、教えてくれるかもしれない。

こんな嫌な女に聞くなんて癪だけど、他に聞ける人もいない。

そもそもあたしはどうやってバクの夢から出たらいいんだ。

バクが夢から醒めたら、あたしはどこに行くんだ。

色んな不安も隣合わせだったけど、まず一番分からないことをはっきりさせたかった。


お姉さんは目をぱちくりさせて、本気で驚いているようだった。

それから呆れたように片手に腰を手を当てて、大げさにため息をつく。


「ふーん……イレギュラーか。いいわ、教えてあげる」