「だめだよ、そんなの困るっ! わけわかんない……食べないで」


あたしがそう言うと、バクは蝶をふっと逃がした。

だけども蝶はくるくるとバクの周りを飛んでいる。

どうして?

あたしはこんなにもやめてほしいって思ってるのに。

あたしの核なら、逃げてよ。


「ひとつヒントをあげよう」


歌うように、バクが話しだす。

つかつかとあたしに歩み寄ってくるから、つい、後ずさった。


「これを食べたって君は死なないよ。俺と同じ存在として生きていける」


「どういう……意味」


ついに背中は壁につく。

バクはあたしの目の前に立って、にっこり笑う。


「そのまんま、だよ?」


そしてまたすっと手を、今度はあたしに差しだした。

そこに、虹色の蝶がぴたりととまる。

バクに食べられたくないあたしの意思に反して。