飛んでる?

あたしがバクのその言葉の意味を理解できずに首を傾げると、彼はすっと空中を指さした。


その先に、確かに『飛んでいた』。


この世界にはないと思っていた光と色を溢れさせた、虹色の蝶。

鱗粉がまるで光の粒のように、周りにはじけて消える。

不規則に飛びまわり、上へいったかと思えば私達の近くまで降りてきたり。


「あれ……食べるの?」


「うん。といっても文字通り口に入れるわけじゃないけどね」


なんだ、てっきりあれを食べちゃうのかと思ってびっくりした。


「綺麗……」


虹色の蝶は、モノクロの世界の中でそこだけ別物みたいに輝いていた。

どうして、あれだけこんなに違うんだろう?

色のあったバクは、よそから来たって言っていたからそのせいだと思う。

でもあの蝶は、あたしの夢の一部なんでしょう?

夢の世界の色と光をすべて奪って、あの蝶だけで独り占めでもしてるのかな。