それは、今まで黒いものが生えていなかった『道』を塞ぐようにして建っている。

やっぱり、ここを目指して正解だったんだ。

道の行き着いた、先。


遠くから見ていても黒かった塔は、近付いてもやっぱり黒かった。

艶もなくて、ただただ真っ黒で、見ていると目がおかしくなりそうなくらいに黒い。

影がそのまま空に伸びているような、不思議な塔。


「入り口、ないね。向こう側かな」


塔に、入れそうな所なんて見当たらなかった。

ぐるりと周りを歩いてみて探すしかないだろう。


ところが、バクに止められた。


「その必要はないよ」


振りかえったあたしは、今度はバクが指差した先を見た。

彼は、塔を指さしている。

真っ黒い壁の、何もないところ。


「扉は作るのさ。君が鍵を持っているから」


それから塔に歩み寄って、すっと手を当てながら微笑んだ。


「触ってごらん。きっと扉は開く」