「ちなみに、うちの部の表面上の活動内容は『ちくわについて考える』だから、一応それだけ覚えておいて」


「どうしてちくわなんですか?」


「語呂じゃないかな? 決めたのは俺じゃないんだ。今の部長は俺だけど、何年か前からあるらしいよ」


「はぁ……シャレですか」


「そうだね。ちなみに実際のところは適当に部室に集まって、人が居たら適当に喋って適当に帰るって感じ。それなりに人いるよ。わりと楽しいから、暇だったらおいで」


毎日部室にいるということは、もちろん部員全員と話したことがあるのだろう。

この先輩はずいぶん気さくなようだし、色々と相談にも乗ってもらえるかもしれない。


部活動の魅力は、なんといっても先輩とのつながりや同じ目的をもった仲間のつながりができること。

形式だけの部活に入ろうと思ったときに、そのつながりを作ることは無理だし諦めようと思ったけれど……これは、思ったよりうまく転がっているようだ。


私は、菊池先輩の言葉に素直に頷いていた。


「わかりました」


「あとはー、半年にいっぺんくらい部活の活動報告書を書かなきゃいけないから、そのときだけは真面目にちくわの話するよ」


「え……!?」


「んで、着きましたーっと。あれ? 鍵開いてるわ」


驚きの声を漏らした私を無視した菊池先輩が、ドアポストの付いた開き戸のドアノブを捻る。

すると扉は、鍵を開けるというプロセスを経ることなくあっさりと開いた。


「ジン、いんのかー?」