「ほんとに外側だけなんですね」


「うん。一応俺は毎日部室の鍵開けて、三十分居座って、部員出席簿つけて、顧問にぽーい、ってやってるけど」


そう言いながら、ものを放り投げるような仕草をした。

私を退屈させないように気を使ってるのかなんなのかわからないけど、いまいちノリの掴みづらい先輩だなぁ、この人。

しかしそれについて行くそぶりを見せなくても、決して困ったり戸惑ったりした面を見せないあたり……特に気にしていないようだ。


「出席簿って、やっぱりチェックがあるんですね……何割部活出なきゃいけないとか、そういうのあるんですか?」


「いやーないない。誰も居なくても全員出席って出しちゃうから」


そうこう話しているうちに部室棟に着いたが、ちくわ部の部室は最上階にあるらしい。

エレベーターは職員用のものしかないので、階段を昇りながら話を続けた。


「ええ……そんなんで大丈夫なんですか? しかもそれって、菊池先輩ばっかり損してません?」


「俺はいいんだよ。三十分って時間の中で何するか決めてそれをやる、ってのも楽しいし。そのための部活だし」


この階段もいい運動になるしねー夏場はダルいけどーなどと話しながら、遅めのペースではあるが随分さくさくと階段を上って行く先輩。

正直私は疲れてきた。このあたりはさすが男子といったところだろうか……

上り際にちらとフロア側を伺うと、銀色の扉が等間隔で並んでいるのが見えた。

なるほど、どうやら同じ間取りの部室がひたすら続いているらしい。