「そうだね。お互い頑張ろう」


私には、それだけ言うのが精一杯だった。

――そして、朝のHRの開始を告げるチャイムが鳴る。

 
それから教室移動ばかりの授業を慌ただしく終えて、放課後。

校舎のフロア自体広いうえに実技関係の授業は別の棟まで行ったりするものだから忙しくてたまらない。

広い校舎をあちこち歩かされる時間割は苦痛だった。

せめてもうちょっと考えて組んで欲しい。

なぜに一日で二つの建物を二往復してさらには体育なんてあったりしちゃうんですか。


さて、時間割を呪っても仕方ないしここでへばっている場合でもない。部室に行って、菊池先輩に会わないと。


「それじゃ私もそろそろ行くね。部活がんばって!」


既に入部届けを出していて、今から吹奏楽部として活動しに行く牧島さんに手を振り、目指すはちくわ部。

奈津さんは行かないと言っていたから、今日は私ひとりだ。


長い階段にへばりそうになりながらも部室に着く。

教室移動で削れた体力に追い討ちをかけるような階段が途中で恨めしく見えたものだ。

先生達はエレベーター使うからいいんだろうけど……全く、羨ましいけど怖くて使う気にはなれない。

鍵は閉まっていないだろうから、軽くノックをしてからドアを開けた。


「こんにちはー」


しかしそこに菊池先輩の姿はなく、部室にはジン先輩しかいない。

音楽を聴きながら携帯を弄っていたらしい。

耳に付けていたイヤホンを外すと、私に軽く手を挙げてにこやかに挨拶してきた。