入部届提出締め切りまであと二日。
今日の私は、ちくわ部に入部する旨をしっかりと書き込んだ入部届を持ってきている。
帰りのHRが終わってすぐ行けば、菊池先輩もいるはずだろう。
そんな朝の、HRの始まりを告げるチャイムが鳴るよりほんの少し前のこと。
「ねぇ、陣野さん」
「ん?」
机の上に鞄を置いた私に話しかけてきたのは、隣の席の牧島さんだった。
腰まである綺麗なロングヘアの、どこか清楚な雰囲気を纏うおとなしそうな女子生徒。
彼女は私より先に着席していたわけなのだが、おそらく朝練を終えて戻ってきていたのだろう。
部活についてろくに考えもしていなかった私と違い、彼女はもともと部活目当てでこの学校を目指したようなものだという。
席が近いというのと中学時代に所属していた部活が同じだという繋がりで、よく話すのだった。
「そろそろ部活決めたの? もう時間ないし……やっぱり吹奏楽部に来たら?」
彼女の中学は強豪校で、全国大会の常連らしい。
おとなしそうな見た目に半してスポ根魂のようなものを持っている牧島さんは、新入部員の立場でありながら私を何度も勧誘していた。
「いや、もうどこに入るかは決めたんだ」
「へぇ、どこ? 勿体ないなぁ、せっかく楽器やったことあるなら続けたらいいのに」
ちくわ部だよ、なんて言えない。
牧島さんの勧誘に、押し付けたり強引だったりということはない。
しかし諦めが悪いというかかなり粘りが強いので、それを回避するには部活名をはっきりさせるべきだとは思うのだが……
「えっとちょっと……かなりマイナーっていうか……」