「ふーん、図星かな? でも入らないといけないから、どうしたらいいか焦ってる、ってとこかな。どう?」

 
――まさか、いや、でも。

適当なことを言ってるだけかもしれない――


しかしここで陣野は思った。

一人で悶々としていても埒が明かないということは痛いほど身に染みている。

だったらもうこの人に聞いてしまえばいい、この人に頼ってしまおう、と。


どうせ生徒数の多いこの学校のことだ。春にちょっと話した程度の一年生をずっと覚えてはいないだろう。

心底困った、といったふうな声を漏らしながら開き直ることに決めた。


「いやもうまさにその通りなんです……先輩、三年生ですよね。活動してない、名前だけの部活とかそういうの知ってたら教えてもらえませんか?」
 

すると男子生徒はすこしきょとんとした後に、軽く首を傾げた。


「ここ勧誘活動禁止だよ?」


「雑談です」


そう答えると、彼はまた数度目を瞬かせる。

それからふっと唇が弓形を描き、不敵な笑みを浮かべた。


「そっか。じゃあうちの部活においでよ。まさに名前だけの、外側しかないぐーたら部だよ」


「……え? え、ちょっと待ってください。本当ですか?」


部活動が活発であることがウリであるこの学院に本当に、名前だけの部活があったことに驚いた。

しかしそれよりも、意外な形で思い通りに事が運びかけていることのほうが信じられなかった。

このことに自分でついていけていない陣野を置いて、男子生徒は続ける。


「うん。この学校にはそういう部活がいくつかあるんだけどね、そのうちのひとつがうちだよ。俺は部長の菊池。とりあえず体験入部……っていうのかな。してみる?」


「……はい、お願いします! ちなみになんの部活ですか?」






「ちくわ部」